学術コンテンツAcademic contents
2025.01.27
「中国でセラミド研究会を設立したい」、中国駐在研究員の思いがきっかけとなった。中国では、皮膚科やスキンケア・化粧品研究において、セラミドのトピックスはまだ新しく、注目されている領域である。また中国の消費者は、商品情報やその技術を自分で調べて納得したものを購入する、いわゆる「賢い」お客様である。つまり研究知見や有効性などエビデンスのある商品は強い。そこで皮膚科医や化粧品研究者、一般の方にセラミドの重要性と可能性をもっと知ってもらうために、産官学連携での中国でのセラミド研究会発足に向けたとりくみが始まった。中国では皮膚科医の先生方の強いご支援・ご協力をもとに組織が結成され、またこれらの取り組みを通じて、研究者レベルでの両研究会を通じた日中交流が始まった。
2023年11月のセラミド研究会・スフィンゴテラピィ研究会の合同年会(加賀)にはリウ・ウェイ先生(元空軍特色医療センター、皮膚セラミド研究会顧問)らが参加くださり、懇親会でご挨拶された。2024年10月のセラミド研究会(浦安)には、イ・ジンユ先生(上海医薬業界会長)、タン・イメイ先生(上海医薬業界会長化粧品委員会委員長、皮膚セラミド研究会会長)をはじめ中国からご関係の先生方が20名ほど参加され、海外招待講演としてリウ・ウェイ先生にご発表いただいた「セラミドと皮膚バリア機能の修復」。
2024年1月の中国セラミドフォーラムの起動式(上海)では弊職が招待講演「セラミドプロファイルが示す皮膚特徴」を行い(下図)、10月の第1回セラミドフォーラム(成都)では、日本セラミド研究会を代表して副会長の花田先生が招待講演をされた”Dysregulation of the ceramide transporter CERT is associated with dominant inherited neurodevelopmental disorders”。
また、この他に5つの学術発表、パネルディスカッションが行われた。学術発表では、日本から羽毛田記子さんが「セラミド機能成分配合スプレー化粧水連用による角層セラミドプロファイル変化」を講演された(下図。画像はいずれも転載許諾済み)。
中国セラミド研究会設立の動きは我々の想像を超えるスピードで進められ、発案から1年で第1回の開催に至った。このスピード感は中国でのスタンダードだそう。
一方で苦労した点もあった。現在は不要となったが、中国訪問にはVISAが必要であったため、取得の準備と訪問スケジュールの調整が第一のハードルとなった。また報道で誇張される日中間の関係性悪化のトピックスは、双方の研究者にとっては心理的な障壁となった。実際には学びを深めて社会貢献したいとの志を同じくする仲間である。加賀、浦安とともに、上海、成都では前夜祭から当日にわたり、歓迎していただき、今後について議論を交わし、交流を深めることができた。
さて、皮膚科医や化粧品研究者、一般の方にセラミドの重要性と可能性をもっと知ってもらうため、という研究会発足の目的は達成されたのか?
ライブ配信で6000名、二次配信では12万人を超える皮膚科医、業界関係者、一般の方が視聴された。これには中国での学会運営のシステムが大きく貢献している。すなわち、①今回のセラミドフォーラムは配信される目的で企画されている、②学会運営会社がKOL(Key Opinion Leader)らとの日程調整からイベントの一切の企画・遂行・配信を担っている(参加者の宿泊予約まで)。日中間の目的や手段での大きな違いを痛感した。
以上のように、中国でのセラミドフォーラムは第1回開催を終えた。学術発表やパネルディスカッションの内容は大変興味深く、さらに学会運営、コンテンツ内容、日中通訳アプリ、などに新たな学びを得ながら、今後のセラミド研究の発展や日中交流の可能性に思いを馳せる貴重な機会であった。末筆ながら、招待講演のため訪中し現地参加してくださった花田先生には、心より御礼申し上げます。
本コンテンツの著作権所有者は著者に帰属し,日本セラミド研究会(札幌,日本)は本コンテンツを当会Webサイトへ掲載できる非独占的通常実施権者になっています.
本コンテンツは,クリエイティブ・コモンズ の定めたCC BY 4.0ライセンスの条件で掲載しており,著者と著作権所有者が明記され,かつ,日本セラミド研究会からの出版物である旨が引用されていることを条件として,他の会での使用,配布,または複製は許可されています.これらの条件に準拠していない使用,配布,または複製は許可されていません.
CC BY 4.0ライセンスの内容については以下URLを参照してください.