学術コンテンツAcademic contents
2026.08.25
受賞演題名
ヒト角質層における新規結合型セラミドの同定
この度は栄誉あるセラミド研究会 2025 年度 Young Investigator Award を賜りましたこと,大変光栄に存じます。本研究は,ヒト角質層における結合型セラミドの構造や存在量についての解明を目的に行ったものです。結合型セラミドは角質細胞脂質エンベロープ(CLE)を構成するセラミドであり,皮膚バリア機能に必須の分子です。結合型セラミドの合成に関与する遺伝子の変異は,皮膚疾患である先天性魚鱗癬を引き起こします。以前,私の所属する北海道大学の木原章雄教授の研究室で行われた研究では,マウス表皮において,エポキシエノン(EE)修飾リノール酸をもつセラミド(以下EEセラミド)がマイケル付加反応を介して周辺帯タンパク質のシステイン残基と結合しており,これが主要な結合型セラミドであることを明らかにしています1)。一方で,ヒトにおける結合型セラミドの構造や存在量は依然として不明であったので,本研究ではそれらの解明を目指しました。

図1
テープストリッピングによりヒト角質層を採取し,調製した結合型セラミド画分(遊離脂質を除去した角質層の残渣)からスルホキシド脱離によってセラミドを遊離させ,液体クロマトグラフィー連結型タンデム質量分析法(LC-MS/MS)を用いて解析しました。その結果,ヒト角質層にはEEセラミドだけでなく,EEセラミドのエポキシ基が開裂したジオール基をもつDEセラミドが存在することが明らかとなりました(図1)。次に,これらの2つの結合型セラミドの量をLC-MS/MSの多重反応モニタリングモードで測定したところ,DEセラミドはEEセラミド量の約6倍多く存在していました。また,ヒト角質層にはスルホキシド脱離により遊離されない構造不明の結合型セラミドも存在しましたが,その量はDEセラミドの約6割であり,ヒト角質層ではDEセラミドが主要な結合型セラミドであることが明らかとなりました。さらに,マウスにおいてもDEセラミドが存在するかをLC-MS/MSによって調べたところ,DEセラミドはマウス表皮にも存在していましたが,その量はEEセラミドの約1/10と少量でした。一方,テープストリッピングによって採取したマウス角質層の上層ではその量が表皮の約2倍であり,DEセラミドが角質層の成熟に伴って増加する可能性が示唆されました。
以上より,私たちはヒトにおける主要な結合型セラミドとしてDEセラミドを見出し,生物種や表皮の部位によってその存在比が異なることを明らかにしました。本研究の知見は,皮膚バリア形成メカニズム解明のための重要な分子基盤になると考えております。
本研究にあたり,終始多大なるご指導を賜りました北海道大学の木原章雄教授,大野祐介助教(現順天堂大学薬学部准教授),本研究を共に発展させた卒業生の杉山拓海氏,ならびに本研究を支えて下さった関係者の皆様に心より感謝申し上げます。今後も本研究を通じて,セラミド研究会の発展ならびに人々の健康の維持・増進に貢献できますと幸いです。
参考文献
1. Ohno Y., et al. (2023) iScience, 26, 108248.

なお,本発表の内容は,2026年8月15日付で FASEB Journal に掲載されました。
Kojima A, Sugiyama T, Ito Y, Otsuka K, Ohno Y, Kihara A. (2026) Discovery of dihydroxy-ketone–type protein-bound ceramides as the dominant type in human stratum corneum. FASEB J, 40, e72184.
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